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ニューズレター第104号【判官びいき・・・】

 この度の台風19号による被害に遭われました皆様に心よりお見舞いを申し上げますと共に、一日も早い

復旧を心よりお祈り申し上げます。

 

 研修等の出張でしか訪れた事がなかった東北。「平和な国を造ろう」と藤原三代が築いたところ。また、シルクロードの最終地とも言われる平泉に「行ってみたい」と思っていました。

 金色堂や史跡をじっくり見たいので、駅前で小回りがきく電動自転車をレンタルいたします。8月の青空がきれいで、切る風がとても気持よく暑くありません。空気が新鮮なせいか、花の色や街の色が鮮明に映ります。

 前から中尊寺通りを進むと、左側に突然、源氏物語の絵巻物などの平安貴族の屋敷に描かれたような、庭跡が現れます。無量光院と言う寺院の跡で、宇治の平等院を模して建てられたそうです。日本庭園と言うと、駒込の六義園など、高低差をつけ岩や滝を配して自然の景色を表したお庭が多いようですが、平安時代のお庭は宇治の平等院など、何となく高低差があまり無いような平たいお庭が多いように思います。

無量光院跡のお庭。池の復元工事をしていたようです。

 鎌倉時代、奥州合戦に平泉入りした源 頼朝はあまりの美しさにこの無量光院を模し、永福寺と言う寺院を鎌倉に建てたそうです。

「この池にきれいな仏殿が映ったんだろうな」。無量光院の裏山に沈む夕日と、静かな水面に仏殿が映し出される風景は、さぞかし美しかったでしょうね。

 また自転車で走ります。皆様ご存知の通り、平泉は源 義経とも深い所です。義経が落ち延びた最期の地の高館義経堂。「ここがそうなのか・・・」石段を登ると左右に参道が別れ、左に進むと義経像が安置されたお堂があります。その姿は凛々しくてお顔も品があります。

 「やっと義経公に会えた!」牛若丸から平家との合戦。また歌舞伎の勧進帳など、とても馴染みが深い義経。大河ドラマのエンディングなどにも放映された義経堂に来たいと、ずっと思っていました。

 

義経公最期の地、高館義経堂

 屋島や壇ノ浦の合戦など大きな功績を挙ると、朝廷より官職を賜ります。それが兄頼朝の逆鱗に触れてしまい、今度は追われる身に。義経は16歳の時に鞍馬山を出ると、藤原 秀衡の下平泉で青春時代を過ごしました。その縁で秀衡を頼りに義経主従は平泉に逃げて来ます。

 ですが間もなく秀衡が他界すると、頼朝の圧迫に耐えられなかった秀衡の子、泰衡の襲撃を受けて自害したと伝えられています。数え年31歳。その場所に494年後の天和3年、仙台藩主第四代 伊達 綱村公が義経を偲び義経堂を建立したそうです。

北上川と束稲山が望める、美しい場所です

 今から14年前の平成17年に滝沢 秀明さんの義経、松平 健さんの弁慶役で放映されたた大河ドラマ「義経」。楽しみに観ていましたが、最終回で義経主従が襲撃さてれしまう、衣川の戦いの場面で思わず涙したのを覚えています。

 北上川となだらかな束稲山を望むと、「こんな美しい所で大変な悲劇があったのだな」と、思いを馳せました。

松尾芭蕉の句碑

 「国破れて山河あり・・・時の移るまで涙を落としはべりぬ 夏草や 兵どもが 夢の跡」義経堂を訪れた松尾 芭蕉が句を詠んだ場所でもあります。大きな句碑を読み、美しい風景を眺めると、目頭が熱くなりました。

 主君を守るために、弁慶は無数の矢を受け、薙刀を支えにして立ちながら最期を遂げたと言う、弁慶立ち往生の地でもあります。物事などが途中で前にも後にも動けなくなる事を「立ち往生」と言いますが、その語源ともなります。

 転車を走らせると、すぐに中尊寺へ着きます。「えっ、この坂登るの!?」黒い門をくぐると、月見坂と言う坂を登ります。長く続く坂はとてもキツく、汗がダラダラ。

 坂の途中に弁慶堂があります。中には弁慶の等身大像と義経の像が安置さてれています。「おおきいな!」初めて見るとちょっと恐いようで驚きますが、どことなく優しい顔の弁慶、気品ある義経。

中尊寺の境内に建つ、弁慶堂

 お守などの授与所の方に聞くと弁慶像は等身大で、1㍍86㌢もあったそうです。逆に義経は小柄と聞いていましたが

推定身長は1㍍47㌢だったそうなので、当時では弁慶はよほど大きかったのでしょうね。

 木々に囲まれ、涼しく気持ち良い弁慶堂からの眺める山や川も悠々と時間が流れているようでした。

「やっと平らな所だ!」坂を登りきると、平らな場所に出ます。急に開け、中尊寺本堂やお土産屋さんがあります。門をくぐり大きな本堂へ上がると、巨大なご本尊が安置され、昭和33年に比叡山延暦寺から分火されたという「不滅の法灯」が、美しい灯篭の中に灯されています。

 

 1231年前の延暦7年に、伝教大師最澄上人が比叡山で灯され、現在まで消える事無く守られてきた、その尊い灯火。

「奥州藤原氏の栄華と滅亡、義経公の悲しい出来事。また、今の私たちの一切を照らしているのかな・・・」。と思いながら、しばらく大切な灯火を眺めていました。また歴史の深さと重みを知ったのであります。つづく